シリコンゴムの2次加硫とは?いる?いらない?

シリコーンゴム製品には二次加硫という工程があります。

この2次加硫、弊社ではおもにシリコーンゴム製品に施します。
その工程とは…1次加硫済みのシリコーンゴム製品を、熱風循環式恒温器(温度を一定に保つ機能を持つ装置)に入れ、160~220℃の温度で4~6時間の熱処理することを「2次加硫(ポストキュア)」と呼び、処理時間は製品の厚みや耐熱温度により決定します。

この2次加硫の目的ですが…大きくふたつあります。
①シリコンゴム成分内に残留してしまう低分子量シロキサンを高温で長時間加熱処理することにより、揮発させてゴム成分の中から除去すること。
②熱を加えることにより物性の安定させること。
これは熱履歴とも言ったりします。

フッ素への二次加硫というか仕上げについては後述。

その他には「耐熱○○○℃ですよ」とうたうことが良くありますが、これは2次加硫時にその温度までいったん上げているからいえるんです(弊社では)
ちゃんと○○○℃までしっかり温度を上げておかないとこれは○○○℃まで耐えれますなんて言えません(自信をもって説明するためでもあります)
なので弊社ではお客様との打ち合わせ通り(見積・仕様)の耐熱性を実現するために指定の温度と時間で2次加硫をしています。

逆に指定がなかったらどうするの?
レギュラー扱いになるので180°×6hとか、その時の生産状況によって200°×4hとかいろいろです、他製品と一緒に処理することが多いので一緒に処理する製品の中で最も指定温度が高いものに合わせるのが一般的です。

実際にどのようにするかといいますと…
【恒温機器】と言われる機械を使用します。
現場では専ら二次加硫窯もしくは窯、ちょっと詳しい方からは恒温槽などと言われております。
温蔵庫とは違います、熱風乾燥炉みたいな感じのものです。
温度は300℃まで上がったり(上げることができます)します。

ちなみに1次加硫なんてあまり言いませんがプレス成型のことを1次加硫と便宜上言うこともあります。
2次があるんだから1次もあるだろうということです。
ちなみに加硫は英語で(primary)vulcanization、二次加硫はsecondary vulcanizationといいます。
たまにプライマリーとかセカンダリーなんて言われることがあったりしますが稀ですね、業界ではプライマリーは効くけどセカンダリーはほとんど聞かない、、ポストキュアとかは聞いたことがあるし後加硫なんて言う人もいたりします。

そもそも

シロキサンとは?

シロキサン(siloxane)とは、シリコンの原料です。
結合が長くなって高分子化したシロキサンがシリコンです。
だから高分子高分子っていうんですね~何のことかわからずに言ってましたがこの業界ではシリコンを扱っている会社などで高分子って付くところがありますが、、つまりそういうことです。

低分子量シロキサンはオイルや加硫(架橋)ゴムなどシリコンゴム製品となった後に微かに残ってしまったものです。
なぜ残ってしまうのか等は説明がとても長くなるので割愛させていただきます、じゃあ残らないシリコン開発すればいいじゃんとなるのですが、、あります。ただし高価です。その製法もややこしくて書くと長くなります、どんなものに使われているかというと体内に使用するものなど医療用としてよく使われています、体内といってもピアスなど一時的に体内に存在するものではなく埋め込む(インプラント)タイプに使用されているようです。
業界最高純度のシリコンはヌシル社製のものだと思います、ありえないくらいの純度で2次加硫不要などというレベルではなく医療グレードやスペースグレード!!!!などの世界最高ランクのシリコンを作っています、日本でも買えますよ。

で、話を戻します。

この低分子量シロキサンが残ると、電気接点障害を引き起こす可能性が少なからずあります。

この原因はいろいろと言われますがシリコンゴムの成分であるシロキサンの中で、揮発性が高い低分子量シロキサン(分子量の割には沸点が低いのが特徴)の残留量が多いと、電気接点障害(主にはんだに影響を及ぼす)の原因のひとつになると言われています。
同じようなことですが接点の開閉時にはアーク(たまに照明のスイッチとかコンセントとかで青っぽく光ったりするアレ)が発生します、そのアーク熱によりシリコンがガス化してシリコン酸化物として接点に付着します、もちろんシリコンは絶縁体なので電気を通さなくなって障害を発生させるということです。
特に環状シロキサンが厄介です。

厄介者扱いされている環状シロキサンを軽減した(ほぼ無くした)シリコンを開発(配合が完成)したので近いうちに製品化というかサンプル作ってお披露目したいと思っています。
既に第三者機関にて物性試験は完了しているのでそのへんのデータは公開できるのですが、何故かいまだに公開には至っていません。理由は察してください。
因みに金型成型品はもちろん押出成型品にも対応した材料なので幅広く対応できるようになるかと思われます、はい。
今のところはちょっと待っててねといった感じでしょうか。

二次加硫釜・恒温機器
二次加硫釜・恒温機器

2次加硫の基準は?

上記のシロキサンを除去させるために2次加硫をするわけです。

材質により条件が異なるので一概にはいうことはできませんが、
200℃×4時間が材料メーカーが推奨している条件です。

長いものになると24時間以上入れるものもあります、フッ素とかね。
フッ素については二次加硫という言い方が正しいのかどうかは意見が分かれるところです、恒温槽を使用する架橋方法だからそう言っているのかあいまいですが、意味合いとしてはプライマリーつまり一次加硫の続きという考え方が一般的です。それほど長い時間架橋反応に時間がかかるってことです。

時間は製品の大きさ等によって調整します。

細かいところでは白色や黒色、その他の色物と分けたりもします、これは家庭での洗濯に似たところがありますね。

サイズでも時間が違う、材質によって温度が違う、違う色物は一緒に入れないなど細かなルールがあるんですが実際のところどうするのって…実務では恒温機器を複数使い分けて対応していることがほとんどです。1台で使い回してもいいのですが…。

メーカーのホームページで保有設備が掲載されていれば一度確認してみてください、恒温器や乾燥炉、熱風乾燥器、加硫缶、二次加硫窯(釜)などと記載されています。

そのほとんどが複数所持しているかと思います。

シリコン系の生産が多い工場なんかだと5~10台以上あることもあります、その場合は時間や温度で使い分けていることが多いですね。

工場の規模にもよりますがある程度容量を確保しておかないと追いつかなくなりますので…プレス終わったのに2次加硫入れれないから出荷できないとか…こんなことにならないように複数所持が基本です。


他のゴム材質(フッ素(後述)、アクリル、ウレタンなど)でも必要なものありますし、
特に必要ないものもあります、あとEPDMでも必要な場合もあります。
やはり長時間高温にさらされると劣化します(もちろん手加減します)のでその辺は手加減が必要かと、
こればかりは会社ごとの考え方、センスだと思います。

シリコンでもするしないは会社によるところが多いので一概にシリコンだから2次加硫いらないよね!?とはならないのが実情なんです。

通常は打合せ時にシロキサンがまずいから二次加硫しますって言ってます、しかしシロキサンがまずくない環境では二次加硫しなくてもいいって考え方もできますからしないという選択肢もあります。そのほうがちょっとだけ安くなったりもしますので考え方ですね。

基本的に電気接点障害が怖いのであればシリコンを使わないことが一番いいことです、このブログで取り上げているシリコンゴムだけでなく、接着剤やオイルなどにも添加されていることが多いので注意が必要です。
製品の説明書などに記載されているので注意して使用するのがあとあとトラブルを起こさない予防策にもなります、使う前に一度見てみましょう。

フッ素も二次加硫しますよね?
なんで?
これは物性の安定化をはかるためにします、意味合い的には一次加硫の続きって感じなのです。フッ素は架橋方法が複雑で2元・3元でも異なりますし、物性も変わってきますので二次加硫も難しいです。
とても気を使います、耐熱温度等物性のことももちろんありますが駄目だった場合のダメージ(金銭的な)も大きいので慎重になりますね。

最近こんなことがありました…

シリコン成型品の見積もりをとったところ、、単価もあってるし納期も想定内だったのでお願いすることにしたんです。

自分のところで成型しろよって言われそうですが工場がいっぱいいっぱいで間に合いそうにない時は赤字覚悟でお願いすることがあります。そのレアなケースのお話しです。

で、とあるところにシリコンの成型品をお願いすることになったんです、納期通りに製品サンプルも出来上がってきて満足しておりましたが…サイズを測ると若干大きいんです!!公差にギリギリ入るくらいの大きさで測り方によっては公差内に収まりきれない→なんで?
金型も間違ってなかった(収縮も含めて)、材料も指定のものを使ってくれているはず、もしかして重量や仕込み、温度や架橋時間がまずかったのかな~なんて考えておりました。

少し間をおいていろいろ聞いてみました。
メーカーさんに。

そしたら二次加硫してないよと…

盲点でした。

まさかしてないなんて思ってなかったから…
見積を見直してみても二次加硫とは一切書いてませんでした、オプションだったんですね~先に言ってくれないと~。

二次加硫したら無事に公差内でした。
金型屋さんまで疑わなくてよかったー。
ホッとしましたが勉強にもなりました。

ちょっとした小話でした。

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